2008-01-01から1年間の記事一覧

帰ろかなでもないけれど冬の空

杭打ちの騒音ばかり師走の駅

欲しいものないわけじやない帰り花 冬座敷歌仙名残に入りにけり 有余るほどあるものや落葉焚き 焦げ目ある方のおむすび枯すすき 「早わかり金融危機」や冬の虹 着ぶくれて実は嘘だと申しけり

水枯れて荒れたる池や冬隣 木の実降る戀しきものに幼年期 金の鵄尾燿ふ秋の別かな 蓑虫のお待ち遠さま風の吹く 秋時雨小暗き庭の葉音かな

疲れ眼をこぼす南蛮煙管かな 読み解けぬ軸はあきらめ十三夜 大花野歩き通してしまひけり めいめいにかへる場所あり秋時雨 御陵に何のゆかりの苅田かな 見つからぬ寺あるもよし菊日和 風なくば気の向く方に芒かな 朝霧に埴輪の馬の濡るるまま

定年退職を迎えるO氏への寄書を請われて 歳月を思へば遠き新酒酌む

吾亦紅途中で消える人ばかり 秋蝉や時計は止まるとき知らず 小半時家をはなれて鰯雲 銀漢に人としてある重みかな 嫌はるるもののをかしき放屁虫 野分けだつ阿国歌舞伎の化身とも

御堂筋歩き通して法師蝉

死ぬことをふつと思つて秋彼岸

道化師の顔逆光に夏の果て

涼風や流砂に沈む月宮殿 清麻呂の卵と見しや梅の花 岩田青崖 清麻呂の句などもありぬ鬼やんま 花籠のある部屋にをり原爆忌 かく一生終る線香花火かな 縁紅き蓮の命の重さかな 風やある少し動きし青簾 詩のやうな俳句好んで雲の峰 黄泉にゐて聞いてゐるのか蝉…

岩田青崖氏に 俳句よりほかに知ることなき青嶺

融通は固よりきかず鰻飯

肌掛けも蹴つてしまへり夏休み 接骨医といふ人知らず鱧の皮 炎天の坂を上れば異人館 梔子の花よごれけりたまゆらに 湯加減を幾度問はれむ帰省かな 送り梅雨駅の下なる古書の街 をさなごのふぐり小さき黴雨かな

無位無官なれど宮址の夏雲雀

片陰を伝ひ聖堂見に行けり 指貫を掌にころがせば鬼やんま 音のない午後過ぎゆけり金魚玉 花氷上りかもめは未だ来ず 白玉や薩摩切子の色映し 時計草びつくり箱のなかの闇 平成の里とびとびの植田かな アパートに黒人霊歌夜濯ぐ

わたしにはなくていい人梅雨に入る

天使魚もさして気にせず不眠症

思ひ出せさうで出てこぬ走り梅雨

指差して雨蛙のケツちよつと圧す

怺へても怺へてもなほ卯浪かな

三十歳ほど巻き戻せれば時計草

夕暮にまだなりきらぬ姫女苑

豆飯やなるやうにしかならぬもの

慈悲心鳥耳に離れず残りけり うその皮ばかりと思ふ走馬灯 白日傘足を浸せる浅瀬かな 猿戸より庭石見へて夏木立 狩衣の公達よぎる祭かな 城跡や生者におちる新樹光

たをやかに春を包みし畳紙 状差しに絵はがき多し春の果 紫木蓮ものを想はずなりにけり 半世紀などは束の間馬具飾る 残高はいかばかりとも受難節 虚子の忌の時間の棒のごときもの 花屑を雨後の愛車の奢りとす をさなければ知らじ四月のうれひかな

亀鳴くといふ偽りをいつくしむ

屋形船すこし動かし春の水機根とは紅梅の香と覚るべし庭のこと父に問ひたき継木かな眠られぬ夜の脳裏に黄蝶来る高楼を岬と化して黄砂降る

はるさめや塔より先はけぶりけり

梅ひらく人のことなどわからない