下草も仄かに明かし桃の花 蛇穴を出てこなければこなければ ・

花冷えや砥石を浸けしアルミ釜改め 花冷えや砥石の少し凹みをり

朝ざくら奥山に道あるらしく

真つ直ぐと曲がつた畝や麦青む改め あぜ道に合わせる畝や麦青む

山の端の前景は花盛りかな

人怖ぢず勝手口まで燕かな改め 長屋にも勝手口にもつばくらめ

囀のひときは高き梢かな

はからずもしやみせん草を踏みしだく改め はからずもしやみせん草を踏みにけり

種袋月齢わかるカレンダー

一反の田の真ん中に雉子かな

やはらかに雨受けとめて春の土改め音もなく雨受けとめる春の土

青饅や亡き人偲ぶ集ひとふ

穫り入れて疵は厨に夕霞

かたはらに苔のトロ箱植木市

あまねくも春光こぼる周防灘

山茱萸や隠ろふものの仄見えて改め花山茱萸奥より夕日の仄見えて

老梅やいま咲くときと咲くばかり

鍬の柄にあご載せてゐる春の暮改め鍬の柄にあご乗せてをり春の暮

Y君の結婚式の祝電に うるはしき歳重ねゆけ花野道

末黒野となりて言祝ぐ生命かな

寒明や傘より見やる無人駅

野良に出ず山にも行かず御取越

冬の日の草焼くけぶり誘ひけり

病む心ひとつにしても合歓の花

父の米寿に

みちとせになるてふ桃のことしより花さく春にあひにけるかな 凡河内躬恒ふるさとに日々を重ねて桃の花

脱毛症かなしからずや春卵

おもむきは春は曙猫は野良

萬葉の悲歌芽柳のけぶる池

永き日を懈怠のうちに見送りぬ

春昼やアジの開きは七輪で